ヘンデル《メサイア》第6回公演が今年3月、パルナソスホールで開催されます。
2009年開催の第1回にソリストとして出演され、その後も出演だけでなく指導者として携わる声楽家の林裕美子さんに、公演に向けてインタビューを行いました。
「『メサイア』を姫路で」と提案したのは当時のパルナソスホールオルガニスト・小榑(こぐれ)由布子さんです。合唱、小編成のオーケストラ、パイプオルガンなど多くの方々が演奏に関わることができるほか、財団設立20周年を祝福するのにふさわしい曲であることが理由でした。
写真:2009年1月11日開催 オラトリオ「メサイア」
わたしは第1回からソリスト(ソプラノ)として参加しました。当初「メサイア」の公演は1回きりの予定でしたが、評判がとても良かった。姫路で全曲を演奏するのは初めてということもあって、お客さまの反応も良かったですし、歌っているわたしたちも、とても楽しかった。それで第2回を開催しようという流れになりました。
2回目は「音大卒の方々に独唱を歌ってもらうのはどうでしょう」と指揮の大塚直哉さんに提案しました。第1回はすべての独唱をプロが歌いましたが、若い方が歌えるレベルのものもあります。また、大学では独唱曲しか学びませんから、この機会に全曲にふれてほしいという思いもありました。独唱と、合唱団と共に合唱のパートも歌ってくださる方、という条件でオーディションを行い、第2回からは毎年、数名の公募ソリストが出演しています。
写真:2011年1月開催 オラトリオ「メサイア」
「パルナソス・メサイア合唱団」も毎回オーディションを実施していて、姫路市民合唱団指揮者の鏡谷明夫さんの指導のもと、昨年8月から練習が始まりました。10代のメンバーが加わるのが姫路の特徴で、第3回からは中学生が、今回は高校生が参加しています。
わたしは今回は合唱アドヴァイザーというかたちで参加していて、鏡谷さんが主に「音」と「ハーモニー」について指導してくださるのに対し、「言葉」と「響き」を重点的に指導しています。
写真:パルナソス・メサイア合唱団を指導する鏡谷明夫さん(左)、林裕美子さん
「メサイア」の歌詞はイギリス英語ですが、エリザベス王朝時代の英語です。日本語で例えると古文のようなかんじでしょうか。現代語とは違う単語があったり、特殊な発音をしたりするのですが、これがかっこいいんです。歌っている合唱団の皆さんも、きっと気分がいいだろうと思います。独特の発音を響きに乗せる、その音を体感してもらいたいので、指導は厳しいです(笑)。でもそれは、心からワクワクしてほしいから。本当のワクワクって、一生懸命にやったときにしか感じられないものです。「メサイア」という作品がもつ祝福の気持ちを、自分の歌で表現できたという実感を、ぜひ本番で味わってもらいたいと願っています。
写真:林裕美子さん
パルナソス・メサイア合唱団
今年の合唱団は42名。12月の練習では、鏡谷さんが各パートの音程を確認し、全員で声を合わせ、それを聴いた林さんが発音などをチェック。メロディの美しさはもちろん、ハーモニーの豊かさ、声が響き合う迫力に圧倒されました。鏡谷さんは「皆さんとても熱心。最初は声が合わなかったけれど、徐々にまとまっていき、一つの合唱団に育っているなと感じます」と話していました。
▶詳細 ヘンデル《メサイア》Vol.6
▶文化情報姫路 2月号 特集「指揮者大塚直哉さんに聞く オラトリオ《メサイア》」