パルナソスホール(姫路市立姫路高等学校音楽ホール)

パルナソスホールブログ

2025年10月14日 更新

【Interview】多彩な演目で魅せる、若き音楽家たち

今年6月に開催された「第28回姫路パルナソス音楽コンクール」弦楽器・ピアノ部門で上位入賞を果たした7名による受賞者演奏会が、今週末10月19日にパルナソスホールで行われます。
当日は、受賞者それぞれが自ら選んだ渾身のプログラムを披露。
今回は、その選曲への思いやこだわりについて、受賞者の皆さんにお話を伺いました。

第1位/国際ソロプチミスト姫路賞 大屋響さん(ヴァイオリン)

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77 第2、3楽章

ブラームスのヴァイオリン協奏曲は小さい頃からの憧れの曲で、6月のコンクールでは第1楽章を弾きました。全楽章を、同じホールで弾いてみたい、と思い選びました。

第2楽章の優美で寂しげなメロディは、弾いていても泣きそうになります。第3楽章は対照的におどけた感じで、ブラームスが大好きなハンガリーの民族的なリズム感と、高揚感のあるクライマックスがかっこいいです。自分なりに試行錯誤して、演奏会ではお客様の心に響くようがんまります!

 

《プロフィール》

相愛高校音楽科3年。第77回全日本学生音楽コンクール大阪大会第1位、全国大会第3位、サントリー芸術財団名器特別賞。第26回日本演奏家コンクール準グランプリ、弦楽器部門第1位。第30回神戸国際音楽コンクール最優秀賞、兵庫県知事賞等多数受賞。プロジェクトQ、小澤国際室内楽アカデミー受講。

 

第1位/国際ソロプチミスト姫路賞 大谷内映さん(ピアノ)

リスト:『ノルマ』の回想(ベッリーニ)S.394

今回、リストの「『ノルマ』の回想」を選んだのには、さまざまな理由がありました。一つ目は、ロマン派におけるさらなるレパートリーの拡大のためです。自分に合った作品をなかなか見つけられなかったこともありますが、ソナタ作品は全楽章で30分かかる大規模なものが多いことから、着手することをやや敬遠していました。最近になり、ロマン派の叙情性を色濃く持つ大作を演奏したいと考えていたときに、この作品が思い浮かびました。

二つ目は、この作品が、現在師事している後藤正孝先生の十八番であったことです。先生が優勝されたフランツ・リスト国際ピアノコンクールでこの作品を演奏し注目を集められたこと、そして、今日までその作品に注いでおられる熱意に深く感銘を受けたことも、取り組むきっかけとなりました。

ベルカント・オペラの最高峰のひとつと称されるヴィンチェンツォ・ベッリーニ(1801-1835)の歌劇《ノルマ》から、7つの合唱・独唱主題を用いて構成されています。ローマ帝国の支配下で生きるガリア地方の巫女ノルマがローマの将軍ポッリオーネと恋に落ち2人の子どもをもうけるが、ポッリオーネが若い巫女アダルジーザに惹かれてしまい…といった三角関係の悲劇的な物語であり、抒情的な起伏が激しい作品です。

作品の後半部分に現れる、美しい旋律とハーモニーの推移が素晴らしい「Padre! tu piangi?(お父様、泣いておられるのですか?)」、続く「Guerra! Guerra!(戦だ! 戦だ!)」への移り変わり、そしてフィナーレを迎える場面が、この作品の山場と言えるのではないでしょうか。

 

《プロフィール》

昭和音楽大学修士課程に特待生として在学中。スコラ・カントルム音楽院にて審査員満場一致の成績でディプロマを取得。第12回国際ピアノコンクール Città di San Donà di Piave 第2位。第32回宝塚ベガ音楽コンクール第1位、兵庫県知事賞。第46回ピティナ・ピアノコンペティションPre特級銀賞。

 

第2位 松蔭さとりさん(ヴァイオリン)

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.35 第1楽章

チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は、ヴァイオリンを習い始めた頃に初めて心惹かれ、いつか弾いてみたいと憧れていた作品です。今年の春にオーケストラと共演させていただき、その中で新たな魅力をたくさん発見し、さらにこの曲への愛着が深まりました。今回、ぜひこの曲を素晴らしいホールで弾かせていただきたいと思い選曲しました。

技巧的な華やかさと情熱的に歌い上げるメロディが魅力的な名曲です。1878年の作曲前、彼は結婚生活が失敗に終わったことで精神を病んでおり、イタリアでの療養生活を経て、スイスの湖畔でこの協奏曲を完成させます。ニ長調で書かれていますが、ときおり現れる切なさに満ちた主題に、心の陰りが垣間見えます。華やかさから情緒あふれるメロディまで、存分にお楽しみください。

 

《プロフィール》

第74回全日本学生音楽コンクール大阪大会高校の部第1位。第12回クオリア音楽コンクール コンサーティスト部門大賞。第8回豊中音楽コンクール弦楽器部門大学・一般の部第1位、豊中市長賞。2023、2024年度青山音楽財団奨学生。相愛大学音楽学部特別演奏家コース4年次に特別奨学生として在籍中。

 

第2位 大同理紗さん(ピアノ)

プロコフィエフ:ピアノソナタ 第6番「戦争ソナタ」イ長調 Op.82 第1、2、4楽章

この曲を初めて聴いた時に、複雑なリズム、鋭い不協和音の中にも人間らしい温かさや寂しさを感じ、彼の持つ独特の世界観に魅了され、胸がとても熱くなりました。いつか演奏したいと切望しており、取り組みを始めました。この機会にパルナソスホールでたくさんの方に聴いていただきたいと思い、選曲させていただきました。

プロコフィエフは9曲のピアノソナタを残していますが、この第6番を含む3曲の「戦争ソナタ」は円熟期の作品です。力強さや激しさ、抒情性など、さまざまな感情が入り混じった複雑な構成を持っています。印象的な鋭いリズムや不協和音、またそれとは対照的に抒情的な旋律を感情的に豊かに歌わせる旋律が魅力的な作品です。第4楽章では、第1楽章の主題が再び現れ楽曲全体をまとめ上げる役割を果たしていますので、ぜひ意識しながらお聴きください。

 

《プロフィール》

京都市立芸術大学に在学中。日本クラシック音楽コンクールピアノ部門大学生の部第2位。入賞者演奏会でオーケストラと共演。堺市新人音楽コンクール最優秀賞。日本国際音楽コンペティション大学生部門第1位。ショパン国際ピアノコンクール in ASIA 全国大会金賞、アジア大会銀賞。ウィーン国立音楽大学にてディプロマを取得。

 

第3位 村上真璃南さん(チェロ)

シューベルト:アルペジョーネ・ソナタ イ短調 第1、3楽章

シューベルトといえば歌曲を思い浮かべる方が多いと思います。今回演奏させていただく「アルペジョーネ・ソナタ」もシューベルトらしい、歌心あふれる美しい曲です。さまざまな楽器で演奏されていますが、チェロにとっても重要なレパートリーの一つになっています。

第1楽章は少し悲しげなピアノから始まり、叙情豊かで美しく、第3楽章はウキウキと楽しくなるような、お洒落で軽快なメロディが広がります。水車がくるくると回るようなイメージをお楽しみ頂ければと思います。

 

《プロフィール》

第26回姫路パルナソス音楽コンクール第3位。第77回全日本学生音楽コンクール大阪大会1位、全国大会1位、横浜市民賞、NHK会長賞。プロジェクトQにルシェリアクァルテットとして参加。小澤征爾音楽塾「椿姫」に首席チェロ奏者として参加。現在、桐朋学園大学音楽学部1年特待生。

 

第3位 米滿希咲来さん(ピアノ)

グラナドス:組曲『ゴイェスカス』より第7曲「わら人形」 ほか

グラナドスの作品は、6月のコンクール本選でもメイン曲として演奏しました。グラナドスは私にとって思い入れのある作曲家で、似合ってる、ともよく言われます(笑)。なかなか姫路で演奏させていただく機会はないので、自分をいちばん表現できる曲を選びました。初めて耳にされる方も多いかと思いますが、この曲との出会いを皆さまに楽しんでいただけたら幸いです。

「わら人形」は『ゴイェスカス』の中で唯一、元となった絵画があります。女性たちが布の端を持ち、布の上のわら人形を高く投げ上げる遊びが描かれています。軽快に弾むリズムに乗せて、女性の声を思わせる美しい旋律が響きます。スペインの陽気さと優美さがひとつに溶け合う瞬間を味わってください。

 

《プロフィール》

第73回全日本学生音楽コンクール高校生の部 東京大会第1位、全国大会第2位。第41回かながわ音楽コンクールピアノ部門一般の部第1位。東京音楽大学ピアノ演奏家コース卒業。在学中に短期留学奨学生として英国ギルドホール音楽演劇学校に留学。

 

※米滿さんは、グラナドスのほかに、ブラームス:「4つのバラード」Op.10より 第1、2曲を演奏予定です。

第3位 松蔭ひかりさん(チェロ)

イザイ:無伴奏チェロソナタ Op.28

妹がヴァイオリンを演奏していることもあり、以前からイザイの「無伴奏ヴァイオリンソナタ」作品27 を知っていました。6曲とも非常に有名で、その美しさと魅力に強く惹かれていました。ところが最近、同じ1924年に「無伴奏チェロソナタ」が書かれていたことを知り関心を持ち、選曲することにしました。

チェロならではの響きと、深い内面を語るような音楽が魅力です。20世紀における無伴奏チェロ作品の代表的な作品であると同時に、ポリフォニーや舞曲形式の引用にはバッハの影響を見て取ることができます。

 

《プロフィール》

8歳よりチェロを始める。第72回全日本学生音楽コンクール名古屋大会、全国大会第1位及び日本放送協会賞、かんぽ生命奨励賞。第15回ビバホールチェロコンクール第3位。相愛高校音楽科、相愛大学音楽学部を特別奨学生として卒業、東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程を修了。

 

2025年10月19日(日曜日)14:00開演

パルナソスホール

第28回姫路パルナソス音楽コンクール 受賞記念演奏会

▶コンクール直後の受賞者のインタビュー 「弦楽器部門」「ピアノ部門」