パルナソスホール(姫路市立姫路高等学校音楽ホール)

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パルナソスホールブログ

2022年3月28日 更新

オルガニスト 山口綾規さんインタビュー

4月10日(日)に開催するオルガンシリーズVol.11に出演する山口綾規さんは、「経済学部卒」というユニークな経歴をお持ちです。演奏会を前に、オルガンと出会ったきっかけ、歌とのコラボレーションの魅力などについて聞きました。

 

山口綾規さん

運命の出会い

―――オルガンとの出会いは。

寝坊したんです。大学の授業に間に合わなくて、もう諦めよう、なにか楽しいことはないかと探していたら、サントリーホールのオルガンコンサートを見つけました。初めて生のパイプオルガンの響きを聴いて、「いつか自分で弾いてみたい!」と思いました。

最初が音楽大学でなかったことは、大半のオルガニストと違うかもしれませんね。不勉強な学生だったからか、のんびりと過ごしているうちに、偶然にもオルガンに出会ってしまいました。

写真:サントリーホールのオルガン

 

―――鍵盤楽器の経験があったのですか。

幼い頃から、ピアノとハモンドオルガンを弾いていました。ハモンドオルガンの教室に、クラシックオルガンの先生がいらっしゃって、最初は電子オルガンでしたが、じきに教会のパイプオルガンでレッスンを受けるようになりました。

 

―――そして経済学部から音楽学部へ。

シアターオルガン(※次項参照)を見たくて弾きたくてアメリカに通った時期もありましたが、やはりクラシックのオルガンをしっかり勉強したいと思い、東京藝術大学の別科に入りました。これが大きな転機となりました。

 

―――クラシックからポピュラーまで、多彩なレパートリーをお持ちです。

ハモンドオルガンではジャズやポップスを弾くことが多かったので、私の音楽経験から考えると、ごく自然なレパートリーなのです。

 

―――山口さんからみて、パイプオルガンとはどんな楽器ですか。

低音から高音まで独りで演奏できることが何よりも魅力です。しかも音楽ホールのもっとも目立つ場所に設置されている、その存在感。これほど贅沢な独奏楽器は他にないと思います。

 

シアターオルガンに憧れて

―――日本では数少ないシアターオルガン奏者でもいらっしゃいます。

中学生の頃、ハモンドオルガンの会社の方に1本のカセットテープをいただきました。その中にシアターオルガンの演奏が入っていて、これまでに聴いたことのない華やかな音色に感激しました。

当時はインターネットが普及していませんでしたから、シアターオルガンのことも、どうしたら触れられるかも、見当がつきません。徐々に情報が入手できるようになってきて、どうしても弾いてみたくてアメリカに通い始めました。とにかく足を運んで、オルガンを見たり弾いたりしたのでした。それはパイプオルガンに出会ってからずいぶん後の話です。

 

―――シアターオルガンとはどんな楽器ですか。

映画に音声がなかった時代に映画の演出(伴奏)に使われた楽器です。基本的にはパイプオルガンですが、音量の変化が出せるようさまざまに工夫されていること、打楽器類も鍵盤から鳴らせるところが、いわゆるクラシックのオルガンとは違うところでしょうか。ぜひ検索してみてください。ふんだんに施された装飾にも驚かれることでしょう。

シアターオルガン

これはカリフォルニアのフラートンという街にあるPlummer Auditoriumのオルガンです。3年前のコンサートで演奏しました。他にもお気に入りのオルガンがありますが、もっともコンソール(演奏台)の様子がわかるものを選びました。

 

―――アメリカで、オルガンはどのように受け入れられていますか。

クラシックにしてもシアターオルガンにしても、聴く側の人々の関心が高いと思います。幼い頃からオルガン音楽に親しんでいるからでしょうか。ご自身は演奏されなくても、曲目や楽器のことなど、皆さん驚くほどお詳しいです。

 

「オルガンと歌で感じる春」

―――コラボレーションに「歌」を選んだ理由は。

万能とも思えるオルガンの表現力も、言葉だけはどうにもなりません。この弱点を補ってくれるのが「歌」だと思います。江田雅子さんとはよくご一緒していて、彼女の自然な歌いかたがとても好きなのと、演奏や音楽に対する考えを正直にやり取りできる関係が、私にとって心地よいからです。

 

―――プログラムには日本歌曲も盛り込まれています。

ピアノで伴奏されることが多い曲を、オルガンで伴奏することに大きな意義を感じているわけではありません。日本語の歌詞なら、たとえご存知ない曲でも歌の意味や楽曲の素晴らしさを伝えることができるという観点から選曲しました。

 

―――ところで、姫路にはどんな印象をお持ちですか。

何度か訪れましたが、お城をシンボルにした、時間と空間にゆとりのある街というイメージです。今回訪れるにあたって少し調べてみたところ「姫路おでん」に興味津々です。

 

―――最後に、お客さまへメッセージを。

公演が近づいてまいりました。大変響きの豊かなホールと伺っています。初めて対面するオルガンも楽しみですし、皆さまとご一緒できる時間が何よりも楽しみです。ぜひご来場ください。

 

 

(2022年3月メールインタビュー)

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