パルナソスホール(姫路市立姫路高等学校音楽ホール)

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パルナソスホールブログ

2024年7月28日 更新

第27回 姫路パルナソス音楽コンクール受賞者インタビュー【声楽部門】

「姫路パルナソス音楽コンクール」は、将来性豊かな才能を持つアーティストを発掘し、姫路とゆかりを持ちながら今後の音楽活動支援を目的とするもので、受賞特典に副賞を授与するほか、次年度以降にオーケストラとの共演機会を提供しています。

今年は6月22日(土)に管楽器部門、23日(日)に声楽部門の本選がありました。受賞者の皆さんをインタビューとともにご紹介します。

【声楽部門(6月23日(日)開催)】

第1位/国際ソロプチミスト姫路賞 小川栞奈さん(ソプラノ)

――演奏を終えて、今のお気持ちは。

今回のコンクールでは、人生で初めて歌うとても難しいオペラアリア「オフィーリアの狂乱」を選曲していたので、とても緊張しました。歌ってみて自分的に課題はたくさんありましたが、こうして結果がついてきたということは審査員の先生方もこの曲を評価してくださったからだと思うので、今後も大切に歌い続けていきたいと思います。またこの賞がいただけたのは、ご指導くださる先生方と近くで支えてくれる家族、応援してくれる皆さまのおかげと存じますので、今後とも良い歌をお届けできるよう精進して参ります。

 

――パルナソスホールで演奏してみて、いかがでしたか。

初めて演奏させていただきましたが、とても響きの良いホールで、自分のしたい演奏の手助けをしてくれるように感じました。客席がいっぱいになったら少し響きが変わるかもしれませんが、本当によく響くので、最初は「どう声を調節して歌おうか?」と音量バランスを考えたり、残響を計算しながら次のフレーズを歌ったりしていました。

響きが舞台上で分散せず、きちんと後方座席まで伸びていき、ホールいっぱいに自分の声が満ちるのを全身で感じながら歌う感覚はひさしぶりで、とても幸せでした。また、舞台に出た瞬間に美しいオルガンに目を奪われ、しばらく見惚れてしまいました……。いつかあのオルガンとの共演もできたら嬉しいです。

 

――どのような作品を勉強していますか。

大学院修士課程でV.ベッリーニというイタリア人の作曲家について研究しました。彼が生まれたシチリアにも何度も足を運び、現地にお住まいのマエストロにベッリーニのオペラアリアをたくさんレッスンしていただきました。ベッリーニのオペラは旋律がとても清らかで美しく、聴く者すべてを魅了します。残念ながら日本でのオペラの公演回数は多くありませんが、《夢遊病の女》や《清教徒》は稀に上演されるので、いつかこれらの演目でオペラに出演するのが夢です。

イタリアには2年留学していたので、ベッリーニ以外のイタリアンオペラもたくさん歌いますし、感情を乗せて歌うのが得意です。しかし日本人に生まれてきたからには、日本語の歌もたくさん歌い広めていきたいと思っていますので、日本歌曲にも大変力を入れて勉強しています。10月の受賞者演奏会では日本歌曲もお届けしたいと思います。

 

――目標にしている演奏家はいますか。また、将来どんな活動がしてみたいですか。

ドイツ人のディアナ・ダムラウというオペラ歌手が昔から好きで、海外の劇場をハシゴして追いかけたこともあります(笑)。見た目も声も麗しく、発声の技術はもちろん、とにかく演技力が光っています。超有名プリマドンナであるにも関わらず、とても優しく接してくださる人柄の良さにも惹かれます。歌だけではなく人間性も立派、そんな歌手に私もなりたいです。

今後は海外の劇場でオペラに出演するために国際コンクール等を受けます。最終的には海外で得た経験を後進に伝えていくために音楽大学の教師になり、日本のオペラ界を発展させていけたらと思っています。

 

――受賞者演奏会への抱負や意気込みをお聞かせください。

姫路の方々、また遠方からいらしてくださる方々、皆さまに楽しんでいただけるようなプログラムを準備しております。他の受賞者の方々も素晴らしい歌手ですので、ぜひこの素晴らしいホールに足をお運びいただき、全身で音楽を感じてくださいますと嬉しいです。

 

 

小川栞奈

《プロフィール》

東京藝術大学卒業、同大学院オペラ専攻修士課程修了。令和2年度文化庁新進芸術家海外研修制度にてミラノで2年間の研修。第28回奏楽堂日本歌曲コンクール他、全10のコンクールに於いて優勝を果たす。第88回日本音楽コンクール第2位および聴衆賞。小林研一郎×日フィルによる「第九」ソプラノソリスト。日生劇場開場60周年記念オペラ《メデア》グラウチェ役。

 

第2位 大上りあさん(ソプラノ)

――演奏を終えて、今のお気持ちは。

前回(第25回)も出場させていただき、その時に悔しい思いをしたのを昨日のことのように覚えています。絶対にリベンジしたい! と強い気持ちを抱きながら2年間頑張ってきました。このたびは受賞でき、本当に嬉しく思います。

 

――パルナソスホールで演奏してみて、いかがでしたか。

パイプオルガンがある素敵な舞台で、演奏できるだけで幸せな気持ちが溢れました。

 

――どのような作品を勉強していますか。

プッチーニ、ドニゼッティ、ベッリーニなどのイタリアオペラに取り組むことが多かったのですが、最近はフランス語のオペラにもチャレンジしています。音楽の美しさが魅力のベルカントオペラが好きです。明るく楽しげな歌よりも、シリアスな感じの歌が得意です。

 

――目標にしている演奏家と、将来の夢を教えてください。

ソプラノ歌手のディアナ・ダムラウが好きで、METライブビューイング(メトロポリタン歌劇場の舞台公演の生中継配信)で「椿姫」を観たとき、歌・演技ともに本当に感動しました。将来はオペラだけにとどまらず、宗教音楽なども勉強していきたいと思います。また、さまざまな年代の方に音楽の魅力を伝えていけるような活動もしていきたいです。

 

――受賞者演奏会への抱負や意気込みをお聞かせください。

またパルナソスホールで歌える日が待ち遠しいです! いままでたくさん磨き上げてきたベストな歌をお届けできればと思います。会場の皆さまと一緒に、楽しいひとときを過ごしたいです。

 

《プロフィール》

2019年3月に武庫川女子大学音楽学部演奏学科声楽専修を演奏奨学生として卒業。2020年3月、同大学音楽専攻科修了。いかるが音楽コンクール声楽音大生・音大卒業生部門第3位。全日本学生音楽コンクール声楽部門大学生の部大阪大会本選入選。東京国際声楽コンクール大学生部門本選第2位。オペラでは「魔笛」パミーナ役、「愛の妙薬」ジャンネッタ役を演じる。

 

第3位 石川真子さん(ソプラノ)

――演奏を終えて、今のお気持ちは。

前日の夜から緊張していたので、とてもホッとしています。素敵な賞をいただくことができ、とても嬉しいです。

 

――パルナソスホールで演奏してみて、いかがでしたか。

出番までとても緊張しましたが、舞台袖の扉が開いた瞬間に美しく立派なホールに感動し、楽しんで演奏することができました。

 

――どのような作品を勉強していますか。

私は高い音域やコロコロと音を転がすような技法を得意とするコロラトゥーラソプラノですので、ドニゼッティやベッリーニなどのイタリア人作曲家や、トマやオッフェンバックなどのフランス人作曲家のオペラを中心に勉強しています。また、今年から関西歌曲研究会に所属し、大好きな日本歌曲の勉強にも力を入れています。

 

――目標にしている演奏家は。また、将来の夢は。

既にオペラからは引退されていますが、フランス人オペラ歌手のナタリー・デセイに憧れています。将来はたくさんのオペラや演奏会に出演し、日本各地、そして他国を飛び回ってみたいです。

 

――受賞者演奏会への意気込みをお聞かせください。

コンクールとはまた違って、演奏会として皆さまにお楽しみいただけるような、ワクワクする演奏をお届けできるように頑張ります。

 

石川真子

《プロフィール》

徳島県出身。大阪音楽大学声楽専攻を首席で卒業。卒業時に最優秀賞、幸楽会永井幸次音楽賞を受賞。第10回徳島音楽コンクール声楽部門大学・一般の部金賞。第77回全日本学生音楽コンクール大阪大会大学の部第3位。第2回東京国際管弦声楽コンクール大学の部第1位。これまでに大田黒啓子、尾崎比佐子の各氏に師事。

 

コンクール講評/審査員長 池辺晋一郎さん

表彰式にて

 

きょうは皆さんの演奏をコンサートとして聴いたような気持ちです。フランスの作品や日本歌曲もあって、おもしろいプログラムでした。水準も高く、とても楽しみました。

最大15分というある一定の時間に、演奏という行為で自分を表現するためには、その「時間」をどう構成するかがとても大事な問題になってきます。これからみなさんはいろんなところで演奏するチャンスがあると思います。「時間」をどう作るかという課題を、常に自分の中に置いていただきたいと思います。

また、声に限らず音楽は、色彩と密接に関係しています。音色(おんしょく)、声色(こわいろ)という言葉もあります。ロシアの作曲家アレクサンドル・スクリャービンは、調と色の関係の一覧表を作っていますし、20世紀を代表するフランスの作曲家オリヴィエ・メシアンは、音を聴くと色が見えたそうです。自分の演奏をどういう色彩にするかということも、ぜひ考えていただきたい。

審査員や聴き手がいる場、しかもこういう響きのいいホールで、自分の思いっきりの演奏を聴かせるという体験を積むこと、それがコンクールの重要性だと思います。それは皆さんがきょう、手に入れた財産です。今後の皆さんの音楽活動に、ぜひ生かしていただきたいと思います。(談)

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